季節の天ぷら

キスの天ぷら

キスってどんな魚?

こんにちは。

今日は、天ぷらでは欠かせないキスのお話をしたいと思います。

キスの旬は、梅雨の5月~7月、初夏にかけて産卵前の餌を一番食べる時期が旬の時期になります。

沖縄以外のほぼ全国で水揚げされていますが、年々水揚げ量が少なくなって来ています。おのずと値段も高くなって来ていて、魚屋さんいわくどんどん高級魚になっているそうです。兵庫県の淡路産や三重県の答志島などが有名ですね。

  • そんなキスの良い物の見分け方は
  1. 鱗がぎっしり付いているもの
  2. 腹がしっかりしてる事
  3. ピンとしてる,まっすぐなもの
  4. 白っぽくなくて、透明のような色に近いこと

この4つ位が見極めるポイントだと思います。解説していきます!

  1. 鱗がぎっしり詰まっているものは、日が経ってない証拠です。時間が経ってきたり、擦れてきたりすると鱗がどんどん無くなってきます。発泡スチロールに並べたり,たくさんの人に目利きされたりしますから、魚屋さんに並ぶまでに鱗が落ちてく訳です。  
  2. 時間が経ってくると身が緩くなってくるので、内臓の重さに腹が耐え切れなくなり腹が破れたり柔らかくなったりします。そのため、腹が固くしっかりしているキスは、状態が良い証拠です。
  3. ピンとしている物は、頭や尻尾を持ち上げるパワーがある証拠です。胴体の真ん中をひとさし指と親指で持ち上げて、しっかり真っすぐな物が理想です。
  4. 時間が経つと魚やイカは、白っぽくなっていきます。本当に新鮮な物は、身が透明のような透き通った色です。
状態があまり良くなくへたれてしまってるキス
ピンとしてる状態の良いキス

そんなキスですが,地域性や人によって違うとは思いますが、キスを狙って漁をしてる方は刺し網漁という漁で取られる事が多いそうです。刺し網漁というのは、魚が通るであろうとこに縄を落とし、その網に魚の頭などを引っ掛かける漁法です。網目に頭などが引っ掛かる様子が刺さっているように見える事から、刺し網漁と言われています。

また、漁師さんによってはキスを専門としている漁師さんもいれば、キスだけではなく、他の魚も取りつつ、キスを取っている方もいます。当然、時間的な問題だったり、鮮度だったりと、キスの専門の漁師さんの方が良い状態を保ちやすいと思います。キスは需要が多い魚ですので、天ぷら屋さんだけではなく、どの料理にも使うと思いますが、天ぷら屋さんならそこまで拘るべきだと思います。 

キスを美味しく揚げるには?

皆様、天ぷらにした時のキスの美味しさとや言えば何でしょうか?

人それぞれあると思いますが、僕はあのホロホロとした、柔らかい食感と、その中でもしっかりとキスのうま味を感じるとこだと思います。あの柔らかい歯切れの良さはキスならではないかと思います。

さて、キスはどのようにして揚げたら美味しく揚がるのでしょうか?様々な揚げ方があると思いますが、自分なりにお伝えしていきます。

まず、キスを揚げるうえで大事なのは、1つは油の温度です。キスは淡泊な味ですが、うま味を感じる事の出来る魚です。繊細な味ですので、高い温度で揚げてしまってはキスのうま味が飛んで行ってしまいます。

ですので、170℃位~180℃位が丁度良いと思います。その理由は、キスを油に入れてから、揚げ終わって取り出すまでの時間と温度が丁度良く合うからです。もちろん衣によって一概ではないのですが、わざわざ高い温度で揚げる必要はないと思います。

180℃以上の高い温度で揚げてしまうと、まだ中の身は、水分が一番良い状態まで抜けきっていないのに、早く火が通る衣だけすぐに固まってしまうので、バランスが悪くなってしまいます。低い温度の場合は、ゆっくりと火が入っていきます。衣の水分が抜け、キスの身からも水分が抜けてきて、程よく火が入ったとこで、周りの衣もサクサクに揚がります。微妙な違いですが、天ぷらは繊細な調理法なので温度や時間の変化に敏感なのです。

もう1つは、食感です。食感というのは天ぷらだけではありませんが、とても大事です。何度も言っていますが、キスは柔らかい魚です。キスを背開きで開いて皮目をサクサクに揚げる事によって、中の柔らかい身とのギャップが生まれます。このギャップにより、より一層身が柔らかいと感じるのです。

では皮目をサクサクに揚げるには?

  1. 皮目を揚げ過ぎない事   
  2. 作りたての衣で揚げる事

サクサクにする為に皮目をしっかり揚げたくなりますが、皮をしっかり揚げると、皮の水分と皮目の衣の水分が無くなります。水分が無くなると、サクサクというより、固い天ぷらになります。

皮と身とのギャップにより、美味しく感じると言うのは、お分かり頂いたでしょうか?

作りたての衣は、空気が入っています。この空気が入ってるのがポイントでして、空気が入っている衣は、熱が入りやすく、水分が抜けやすいのです。衣の中に無数の空気穴がありまして、そこから熱が入り、水分が抜けて行く訳です。しかし、時間と共に空気が抜けていきます。ですので、空気穴が少ない時間が経った衣は、水分が留まってしまう為サクサクに揚がらないのです。

そして油から取り出す前に何度かひっくり返しましょう!ひっくり返す理由は、油に入っているとはいえ、キスのおもて面と裏面では表面の温度が違います。当然鍋の下の方から熱が加わる為、裏面の方が熱くなりやすく温度が高くなります。おもて面は表面温度が低い為、油切れが若干悪くなります。油切れが悪いと言う事は、べちゃっとなりやすいと言う事にも繋がりますので、油から取り出す時は、裏表をひっくり返すのがポイントです。これはキスだけでは無く野菜でも他の魚でも同じです。

では身はどうなのでしょうか?天ぷらにした時にベストな身の状態はどんな感じなのでしょう?

キスの身は、柔らかいだけではなく、歯切れの良さも特徴です。それを最大限に活かす為には身の水分を程よく残すのがポイントです。つまり固くなってしまうので、揚げ過ぎない事です。水分を残す事で身の味も残る事になります。キスはほのかに甘味があり、なおかつ他の白身の魚では出せないうま味がありますのでこれを活かす事です。

さらに、揚げ過ぎてしまっては衣に香ばしさが付きます。香ばしさも時には必要なのですが、キスのような繊細な魚には向きません。味が負けてしまいます。

では、身を美味しい状態で油から取り出す目安はどのくらいなのでしょうか?

当然ですが、揚げている時は食材の水分が抜けてきます。分りやすい動画をお見せします。

最初はキス全体に気泡が出ていましたが、裏返しにして47秒位からキスに覆う気泡が少なくなったのがお分かりでしょうか?これが水分が抜けてきてる証拠です。火を通せば通すほど気泡がなくなっていきます。

取り出すタイミングは、シーンにもよります。ご家庭で召し上がるならしっかり水分を抜いて、へたらない天ぷらが良いと思いますし、すぐ食べるカウンターなどでは、先ほど説明したように少し水分を残した方が良いと思います。ですので、気泡が少なくなったタイミングを見計らい取り出すのがポイントです。

ちょっと変わったキスの天ぷら

ある神戸の天ぷら屋さんに食べに行った時に、昆布締めしたキスの天ぷらが出てきました。お店の方いわく、白身だけでは飽きてしまうし、味のアクセントに、という事でした。なろほど!と思いましたね。

しっかり昆布のうま味がキスに入ってるし、水分が抜かれてる分、油の中に入れる時間も少なくて済みますからね。その分油が悪くなりにくい。それに天ぷらは白身の魚が多くなってしまうので、良いアクセントになり、とても美味しく頂きました。そういったお客様を喜ばす考えや、思い、アイディアなどが、お店での話のネタや楽しい雰囲気を作っていくのだなと感じた瞬間でした。

それでは今回はこれで!