季節の天ぷら

車海老の天ぷら

車海老とは

こんにちは。

今日は、天ぷらには欠かせない車海老の話をしたいと思います。

まず、車海老の名前の由来ですが、海老の胴体を曲げた時に模様が車の車輪に見える事が由来です。

車海老の旬ですが、夏と言われています。6月~8月ですね。これは天然物の話で、養殖物は冬が旬と言われています。ただ、養殖物は味が安定している為そんなに変わらない気もしますが、、(笑)

天ぷら屋さんで使われる車海老は、だいたいはマキ海老か才マキ海老と呼ばれています。

この違いですが、どちらも車海老には変わりはないのですが、大きさで区別されています。だいたい10㎝以下を才マキ海老、10㎝~15㎝位をマキ海老と呼んでいます。

小さい方が甘くて美味しいと考えるお店もありますし、ある程度大きさがあった方が良いと考えるお店もあります。

先ほども少しお話しましたが、車海老には天然物と養殖物があります。どちらも美味しいのには変わりはありません。

ちなみに、愛知県と熊本県は車海老が県魚に指定されています。

天然の車海老は、少し色が薄い感じです。おそらく餌の違いや、生息している場所などにより、身体の色が天然と養殖では違います。どちらかというと養殖は赤色に近いようなはっきりとした色をしています。

数や安定的に入荷があるのは養殖です。値段はやや天然が高価でしょうか。

しかし、車海老の養殖業者は沖縄や九州など南の方に多いのです。そのため台風など飛行機が飛べない状況になったら、数も少なくなり値段も上がります。

車海老を選ぶ事があったら、胴体を触ってみてしっかり弾力があるものを選ぶのがポイントです。あと、脱皮直後というわけではありませんが、皮が柔らか過ぎるのは皮が剥きにくく、少し剥くのに時間がかかる場合があります。手の温度によって、海老は悪くなりやすいので注意が必要です。

車海老の天ぷら

車海老の天ぷらの醍醐味と言ったら、あのなんとも言えない甘味とうま味ではないでしょうか。

車海老は,お刺身で食べても美味しいのは言わずもがなですが、熱を加えた方が格段に美味しくなります。

それは、車海老のアミノ酸が熱によって編成されうま味成分が多く出てくる為です。

その熱の加え方が車海老が美味しくなるポイントなのです。

天ぷらの熱の加わり方は、衣の水分がまず熱せられ、その熱せられた水分が中の食材に火を通していきます。

つまり油の熱は直接あたらない為、蒸されている状態になります。

徐々に火が入っていく事になるので、海老の中の水分を残しつつレアな状態を見極める事が出来るのです。

なぜレアな状態を狙うかというと、揚げ過ぎてしまっては、海老のうま味成分と甘味が飛んでしまう事が1つと、海老の香りも飛んでしまいます。そして、海老の水分も抜けてしまい、食べた時に固い食感の海老になってしまいます。

この理由から海老をレアな状態で揚げる事が出来て、なおかつ香りも損なわない、食感もねっとりとした状態をキープ出来るので、海老を熱する調理法として天ぷらは適しているのです。

先ほど食感と言いましたが、食感も甘味を感じるうえではとても大事なのです。

皆様、甘海老のお刺身を食べた事がありますか?どんな食感でしょうか?おそらく、ねっとりとトロリとしてると思います。

さて、車海老の刺身はどうでしょうか?

プリプリと少し食感があるように思います。海老には、グリシンというアミノ酸が含まれており、グリシンの特徴は、甘味がある事です。

車海老と甘海老では、車海老の方がグリシンの量が多いのですが、お刺身で食べた時は、甘海老の方が甘く感じると思います。

それは、甘海老の食感にあります。タンパク質が溶け込んだトロミを持っている為、そのトロミが舌の上にまとわり付き甘さを感じられます。

逆に、熱を加えるとタンパク質が固まりねっとりとした食感が感じられなくなります。

難しいですね、熱を加えることでタンパク質の編成により海老自体の

甘味は増しますが逆に、タンパク質が固まってしまう為、ねっとりとした食感は無くなってしまうのですね。

では、このことを活かして車海老の天ぷらに置き換えて見ましょう。

つまり、揚げ過ぎず、油の温度も高過ぎず、中心がレアの状態を狙うのです。中心がレアの状態ならば、ねっとりとした食感に近い為より舌が甘味を感じるのです。

揚げ過ぎてはダメと言うのは、海老の水分が無くなってしまう為、固くなりダメと言う事ですが、ではなぜ油の温度が高すぎてはダメなのでしょうか?

それは油の温度が高すぎてしまっても、油が早く悪くなってしまいますし、もう1つは、早く火が入り過ぎてしまうのです。

早く火が入ってしまうと車海老の甘味がでてくる前に火が入ってしまう為、甘味が十分に引き出せないと考えます。

一概にこの揚げ方が全てとは限りませんが。ただ,海老のねっとりとした食感を残すなら、低めの温度で揚げジワジワ火を入れた方が食感が残ります。180℃~185℃位が良いと思います。最初は大きな泡が海老を覆うように早くにでます。そのあとに少しゆっくり細かい泡になってきますので、そこが上げるタイミングです。

これが車海老の甘味を引き出す揚げ方で、なおかつねっとりとした食感も残り甘味を感じやすい方法です。

天ぷら屋さんでは、だいたい最初に海老の足の部分を素揚げしたものが出てくると思います。実はこの部分もただ素揚げすれば良いというものではありません。

この部分を僕らは、モサや,クモと言ったりします。

モサは頭の下に付いてます。とても水分が多くて揚げる前に水気を取らないといけません。そのまま入れると油が悪くなりますからね。

そしてモサの取り方が悪いとモサに身が付いたり、モサがちぎれてしまう事があります。ですので、このような細かい所にも手を抜きません。

モサは、香ばしくてほのかに甘味もあり、お菓子のようにパリパリとして、とても美味しい部分です。しかし、揚げ過ぎてしまうとただただ、お菓子を食べているようになってしまいます。ですので、泡が完全に無くなる前に取り出して香りとうま味が残るようにします。

このように美味しい状態で出すためには、モサだけではなく、1つ1つの仕事をちょっとでも手を抜くわけにはいかないのです。

天ぷらは、仕込みや、ちょっとした油の温度、衣の作り方などで味が変わってしまいます。もちろんそこが面白いとこなのですが、悪い天ぷらになってしまうのも事実なので、常に真剣勝負の仕事です!

まとめ

少し話はそれましたが、車海老のうま味を最大限に引き出すには

  • 高すぎる温度で揚げない
  • 引き上げる瞬間を見極める(小さい泡がゆっくり出てくるようになったら)
  • 食感はねっとりとした状態を目指す

なかなかご自宅で天ぷらをやられるのは面倒ですし、大変かもしれませんが、スーパーで車海老は売られている事もありますし、一度意識してやってみても面白いかもしれませんね。